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ブリューゲル「バベルの塔」展

H29年5月
ボイマンス美術館所蔵、ピーテル・ブリューゲルの「バベルの塔」を観てきました。
「バベルの塔」といえば中学の美術の教科書で目にした、
手前に建設を命じた王様が描かれている、
ウィーン美術史美術館所蔵(1563年)の作品を思い浮かべます。

今回来日した作品は、それよりも後、1568年頃の油彩画です。
作品の大きさも先の4分の1と小さく、基本的にはウィーンの絵の
焼き直しと捉えられているようです。
大気の光の精妙な描写、明暗のグラデーションの豊かさ、
色彩の鮮やかさの各点において、第一作を上回る出来映えを
誇っています。
建設作業もいっそう進んでおり、雲を突き抜けた最先端は
すでに10層目に達してます。
画面に接近して凝視すると、
数えきれぬほどの人物が書き込まれているのが
わかります。

↓オランダ・ロッテルダムのボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館所蔵の「バベルの塔」

ブリューゲル「バベルの塔」展_a0043445_08120235.jpg



低層部が風雨にさらされて灰色なのに、
最上部の煉瓦が鮮やかな赤みを保っているのは、建設工事が
大変長く続いていることを表しています。


↓オーストリア・ウィーン美術史美術館所蔵の「バベルの塔」

ブリューゲル「バベルの塔」展_a0043445_08114698.jpg



旧約聖書の冒頭に位置する「創世記」に記された物語。

人々は同じ言葉を使い、同じように話していた。
天まで届く塔を作ろうとした人々の野心に、神は怒り、
「彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているからこのような事を
始めたのだ。これでは彼らが何を企てても、妨げることはできない。
直ちに彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉が聞き分けられぬように
してしまおう」
神は彼らの言葉をバラバラにし、意思疎通が出来なくなったため、
全地に散って行き、塔の建設も中断された。
塔はヘブライ語で混乱を意味するバベルと命名された。


また、ブリューゲルは優れた版画を多数残しています。
版画は同じ図柄が複数印刷され、
比較的安価なため、絵画よりも広範囲に普及しました。
ブリューゲルは様々な形で版画制作に関与しました。
版画制作の全行程を自らの手で担ったのは
「野ウサギ狩り」のみで、それ以外の版画は下絵を考案し、
制作は専門の彫版師が行っていました。

ブリューゲル「バベルの塔」展_a0043445_08131726.jpg



↑ 1557年「大きな魚は小さな魚を食う」


1556年「聖アントニウスの誘惑」1557年「大きな魚は小さな魚を食う」
を手始めに、偉大な先達ヒエロニムス・ボス風の主題・モチーフに
集中して取り組みます。
その他の版画でも、農民やスケートをする人々、
愚者やペテン師などありとあらゆる人物、
日常の暮らしを描き出しました。



板の上に描かれた500年前の油彩画は、保存状態もデリケートなため、
ブリューゲルは海外で作品を展示することが最も難しい
巨匠の一人だと言われています。
今日7月2日は、東京都美術館の公開最終日ですが、
そのような貴重な作品を日本で観ることができ、
とても勉強になりました。
幸い5月下旬の早朝は美術館も空いており、
ゆっくりと堪能することができました。
その日は、国立新美術館ミュシャ展にも足を運びました。
                          (「BABEL」図録参照)



by totochoco | 2017-07-02 12:09 | 美術 | Comments(4)
Commented by desire_san at 2017-07-02 18:06
こんにちは、
私もブリューゲル『バベルの塔』展を鑑賞してきましたので、ブログを興味深く読ませていただきました。ブリューゲルの『バベルの塔』は、リアルな表現と、非常になめらかで自然な描写と絵具を何層にも塗り重ねて透明感を出しているところなど繊細な表現にも魅了されました。ブリューゲルがどこまで細かく描けるか、超絶技巧超絶の限界に挑戦しているようにも感じました。日本ではほとんど見られないヒエロニムス・ボスの油彩画2点も見られてよかったですね。

私はブリューゲル『バベルの塔』展の感想と、かつて来日した作品や現地に行って見たブリューゲルとボスの名画を紹介しながら、ブリューゲルとボスの絵画の魅力と違いもブリューゲルの世界観・人間観を考察してみました。一度眼を通して頂けると嬉しいです。

Commented by totochoco at 2017-07-02 21:53
> desire_sanさん
「貴婦人と一角獣展」でコメントを頂いて以来、
desire_sanさんのブログは感心して読ませていただいております。
私にとってのブリューゲル「バベルの塔」はウィーン美術史美術館所蔵が
馴染み深い絵になっていましたが、この度の展覧会では、細部まで
丁寧に描かれた技法と、塔全体の美しさに感銘致しました。

ボスの「快楽の園」は有名ですが、油彩画2点観ることが出来て良かったです。
樹木人間、何故か惹かれます。
Commented by あっつぁん at 2017-07-11 16:04 x
totoさぁん、こんにちは~
素晴らしい作品ですね
わたしも美術鑑賞が大好きなんですー
学生の時は美術部でした
興味ある内容の時は必ず美術館に足を運びますが、やはり福島県だと福島市と郡山市くらいしか美術館がないので、作品に触れる頻度は自ずと少な目ですね
東京だと探せば何かは見つかるという感じでワクワクしますね
(*^-^*)
Commented by totochoco at 2017-07-12 23:48
まあ、あっつぁんさん、私も美術部
だったのよ。黙々とデッサンしていた美術室、
テレピン油のにおい、懐かしいです。
東京の美術館までは、ここから2時間くらいなので、
足を運ぶのはどうしても観たい作品だけに限られます。

1年に数えるほどですが、カレンダーに印をつけた
その日を楽しみにワクワクします。
絵や音楽を鑑賞した後は、
感動のパワーを貰っていろいろな事が
頑張れます。
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