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ルドン展

三菱1号館美術館で開催されている、
オディロン・ルドン(1840-1916年)展に行きました。

今回は植物に焦点をあてた展覧会となります。
ドムシー男爵の城館の食堂を飾ったパステル画「グラン・ブーケ」
(大きな花束  248.3㎝×162.9㎝)

を同食堂の残りの15点(オルセー美術館蔵)と合わせて展示されています。
何という種類の花なのか、グラン・ブーケの花瓶の花は
面白い形の花々がふんわりと舞い上がり、カンヴァスからこぼれ落ちてくるように
描かれています。並外れて大きな絵の上には奇妙な向日葵が
もっともっと空へと首を伸ばしています。
小さな赤いナナカマドの実・右下の黄色い花はキク科の植物、キンセンカのようにも
見えます。マーガレットやヒナギクらしき花々も描かれています。
閉じた眼のように見える植物もあります。
下の赤い花は枯れ落ちてゆく芥子のよう。


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赤外線写真によると、ルドンは木炭などによる下絵を描かずに、
全体の構図を考えながら、直接パステルで描いたと思われます。
↓「青い花瓶の花」パステル
ここにも赤いナナカマドの実。ミモザの黄色。
「黄色い花咲く枝」という、ミモザを描いた作品も展示されていました。
大きなミモザの木を仰ぎ見ると、風に黄色い花弁が舞い散る様子
が描写されています。
我が家の裏庭にあったミモザの大木を思い出します。
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↓15点のドムシー男爵の城館の食堂壁画「花の装飾パネル」
ルドンの植物の作品からは、小さな細胞や微生物や植物の芽が生まれ出て、
「生きる」という溢れた力のようなものを感じます。
カンヴァスを越えて、ざわついた生き物の蠢きを感じます。

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↓「日本風の花瓶」油彩
こちらは昨年、ポーラ美術館で観てきました。
画像にはありませんが、「首の長い花瓶にいけられた野の花」
という、ニューヨーク近代美術館(MoMA)所蔵の
アネモネやカーネーションが描かれた絵も好きな一つです。

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植物は、刈り取られた瞬間からゆっくりと死を迎える。
ルドンは自ら描いた花について
「再現と想起という二つの岸の合流点にやってきた花ばな」
と記しています。

↓「夢想・わが友アルマン・クラヴォーの思い出に」リトグラフ
ルドンを眼に見えない世界へと導いた植物学者アルマン・クラヴォー。
ルドンによると、クラヴォーは、「無限に微少なものの研究をしていました。
・・・知覚の限界のような世界で、動物と植物の中間の命、花というか存在というか
、一日のうち数時間だけ、光線の動きによって生物として生きる
神秘的な存在を研究していたのです」
(図録より)
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↓「タピスリー用下絵」油彩
下絵と共にゴブラン織りの椅子が展示されていました。
私は織られた作品よりも、下絵の方に惹かれました。
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ルドンの絵というと、真っ先に
一つ目巨人のキュクロープス・沼の花・豆の種が生命を得て
地上に顔を出した片方の芽(眼)の印象的な作品を思い浮かべます。
その芽は、初めて見た世の中を探っているようにも見えます。
今回の作品展では、芽(眼)と対照的な樹木・花々・蛾など、
植物にまつわる作品を、比較しながら堪能してきました。

(画像は図録から撮りました)




by totochoco | 2018-04-19 23:03 | 美術 | Comments(0)
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